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作成日:2024年7月3日

自損事故(単独事故)とは?起こしたときの対処手順と自損事故で使える自動車保険を紹介

自損事故とは、車の運転操作を誤り電信柱に追突するなど、運転者だけで起こした事故のことです。自損事故では保険が使えないと思われがちですが、実は任意保険の中には運転者・同乗者、自分の所有車や他者の所有物に対して、保険金を請求できる商品もあります。

本記事では、自損事故の概要と、起こしたときの対処手順、利用できる保険商品、補償適用時の注意点などを解説します。適切な自動車保険に加入して、万が一の事態に備えましょう。

自損事故とは運転者が単独で起こした事故のこと

自損事故とは運転者が単独で起こした事故のこと

自損事故(単独事故)とは、運転者が単独で起こした、相手方のいない事故のことです。具体的には以下のような事故が該当します。

  • ・ブレーキとアクセルを踏み間違え壁に衝突した
  • ・バック時に操作を誤り電柱にぶつかった
  • ・走行中に崖などから転落した

自損事故でも警察への報告が必要

軽症の自損事故では、相手方がいないことから自力で対処してしまうこともあるかもしれません。

しかし、程度の大小に関わらず、運転者は交通事故発生時に直ちに警察へ報告しなければいけないと、道路交通法第72条第1項に定められています。なお、上条に違反すると、道路交通法第119条1項17号の規定により、3カ月以下の懲役、または5万円以下の罰金に処される恐れがあります。さらに、警察に報告しないと「交通事故証明書」が発行されないため、任意保険の保険金請求が出ません。

義務を怠ればペナルティが科される

速やかに警察に報告するなど必要な処置を取れば、罰金や違反点数の加点などのペナルティは生じません。公共物を破損した物損事故も同様で、報告さえすれば賠償は必要となるものの、罪に問われる訳ではありません。

しかし、「軽く電柱に当たっただけだから」と自己判断して報告を怠ったときは、当て逃げに該当してしまいます。検挙されれば違反点数の加点や、過去歴に応じた30日間の免許停止、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金などが科される恐れがあるため注意しましょう。自損事故であっても放置せず、正しい手順で対処する必要があります。

自損事故を起こしたときの対処手順

自損事故を起こしたときの対処手順

自損事故を起こしてしまったときは、以下の手順に従い必要な措置を講じましょう。

  • ・危険防止措置を行う
  • ・警察に必要事項を報告する
  • ・病院で診察を受ける

それぞれ解説します

危険防止措置を行う

道路交通法第72条では、事故を起こした運転者の危険防止措置の実施を義務付けています。直ちに運転を停止した後、負傷者がいるときは救護し、道路上で危険が生じないように防止するなどの処置のことです。

自損事故の場合、被害者はいないため継続車に被害が生じないよう措置を講じる必要があります。まずは自身の運転する自動車を安全な場所に停止し、建物や車などの破片が散らばったときは片付けます。このとき、自分が継続車に引かれることのないように注意しましょう。壁などが崩落し交通の妨げになっているなら、後続車の誘導なども必要です。

警察に必要事項を報告する

危険防止措置を行った後は、最寄りの警察署に事故時の状況を報告します。具体的な内容は以下の通りです。

  • ・事故を起こした日時と場所
  • ・事故時に損壊した物と損壊の程度
  • ・危険防止措置の内容

状況報告が必要なため、事故が発生したときは日時や住所、状況などを事前にメモに残しておくとスムーズです。なお、上記以外にも車の故障の程度や、積載物の状況などを聞かれる可能性もあるため、質問された内容には正直に答えましょう。

病院で診察を受ける

必要な措置を講じた後は、整形外科などの病院で診察を受けましょう。交通事故の場合、外傷がなく軽度の事故であっても、後から痛みやしびれなどの症状が出ることは珍しくありません。また、診断が遅れると、交通事故との因果関係の証明も難しくなり保険金を受け取れなくなる恐れもあります。このため、その場では症状がなかったとしても、念のため病院に行って診断を受けることが推奨されます

自損事故でも使える保険がある

自損事故であっても、けがをした人によっては強制加入の自賠責保険が適用されます。また、任意保険は種類により適用される対象が異なるためよく確認しましょう。保険の種類と適用される対象者(物)は以下の通りです。

保険(種類) 運転者の死傷 同乗者の死傷 自分の所有車 他者の所有物 自分の所有物
自賠責保険
人身傷害保険
搭乗者傷害保険
対人賠償保険 〇(被保険者の家族以外)
車両保険
対物賠償保険
自損事故保険
自宅・車庫等損害特約

それぞれの保険の概要と詳しい補償内容は次の項で解説します。

運転者が死傷したときに適用される保険・補償内容

運転者自身が死傷したときは、以下の保険が適用されます。

  • ・人身傷害保険
  • ・搭乗者傷害保険
  • ・自損事故保険

人身傷害保険は、契約中の車両に乗車中の運転者や同乗者、または契約対象者が事故で死傷したときに、治療費や収入が補償される保険です。過失割合に関わらず損害を受けた分の保険金が受け取れるものの、人身傷害保険と自損事故保険の両方からは受け取れません。単独使用では翌年度の等級に影響はありません。

搭乗者傷害保険は、契約車両に乗る運転者を含む搭乗者全員に、けがの程度に応じた定額の保険料が支払われる商品です。人身傷害保険とセット加入も可能です。単独使用では翌年度の等級に影響はありません。

自損事故保険では人身傷害保険の適用対象とならなかったときに、運転者や同乗者の死傷を上限額の範囲で補償します。任意保険に自動付帯されることが多いものの、使用すると3等級程度下がるため翌年度の保険料に影響があります。

同乗者が死傷したときに適用される保険・補償内容

同乗者の死傷が補償される保険は以下の通りです。

  • ・自賠責保険
  • ・人身傷害保険
  • ・搭乗者傷害保険
  • ・対人賠償保険
  • ・自損事故保険

強制加入の自賠責保険は、運転者は除外されるものの、同乗者の死傷は補償の対象となります。補償額はそれぞれけがで最高120万円、後遺障害は最高4,000万円、死亡は最高3,000万円です。

自賠責保険の詳しい内容は「自賠責保険とは?補償内容や事故後の対応・任意保険との違いを解説」をご参照ください。

人身傷害保険と搭乗者傷害保険は同乗者も対象となり、前者では実際の損害額を、後者では定額の保険金をそれぞれ受け取れます。また、自損事故保険も同乗者を対象としています。

対人賠償保険は他人を死傷させ、賠償責任を負った際に補償される保険商品です。このため、同乗していた人が他人であれば補償を受けられるものの、被保険者の配偶者・親・子どもなどの場合は対象外となりません。

所有物が損傷したときに適用される保険・補償内容

所有物の破損では以下の3通りが考えられます。

  • ・自分の所有車
  • ・他人の所有物
  • ・自分の所有物

それぞれ対応する保険と補償内容を解説します。

自分の所有車

自分の所有車を傷つけたときに適用される保険は以下のみです。

  • ・車両保険

車両保険は自分の所有する車の損害を補償する保険商品で、修理費用から自己負担額を差し引いた保険金額を受け取れます。なお、車両保険の中には「一般型」と「限定型」の2種類があり、多くの場合、限定型は自損事故を補償対象としていません。車両保険は使用すると等級が下がります。

車両保険の詳しい内容は「車両保険に加入すべき?加入の判断基準や補償範囲を解説」をご確認ください。

他人の所有物

他人の所有物を傷つけたときは、以下の保険が利用できます。

  • ・対物賠償保険

対物賠償保険では、事故により他人の物などに傷を付けたり、破損させたりして、損害賠償責任を負ったときに補償され、自損事故も対象です。なお、保険額は契約時の設定額を上限とし、無制限とすることも可能です。使用すると等級が下がります。

自分の所有物

自分の所有物を傷つけたときは、自宅や車庫であれば以下の保険で補償を受けられます。

  • ・自宅・車庫等損害特約

契約車両使用中の自損事故で、自宅や車庫を破損させたときは復旧費用を保険金として受け取れます。通常、車両保険のオプションとして設定が可能です。限度額は1事故につき30万~50万円を上限とし、使用により等級が下がります。

保険が適用されないケース

保険が適用されないケース

自損事故では死傷者や破損物の所有者に応じ、それぞれ使用できる保険があるものの、以下の場合、保険が適用されません。

  • ・飲酒や薬物の使用などにより正常な運転ができなかったとき
  • ・車が盗まれ自損事故を起こされたとき
  • ・自損事故の届出を警察に行っていなかったとき

それぞれ、詳細を解説します。

飲酒や薬物の使用などにより正常な運転ができなかったとき

自損事故が飲酒や薬物などの使用により、正常な判断ができなかったことが原因の場合、保険で運転者自身の被害は補償されません。また、同乗者や車の被害は補償されることが多いものの、保険会社により扱いが異なる可能性があります。保険金が支払われないどころか、飲酒運転などでは運転者に罰金や罰則、行政処分が科されます。

車が盗まれ自損事故を起こされたとき

契約車両が盗難被害に遭い、犯人が自ら事故を起こしたときの保険金の支払いは、車の管理状況により異なります。保険が適用されるのは、所有者が適切に管理しており、事故により生じた損害賠償が犯人の責任となったケースです。また、車が所有者に戻らなかったときは車両保険が適用されます。

一方、ドアの鍵を閉めていなかったなど、管理方法に問題があるときは、犯人だけでなく所有者も損害賠償責任を負う恐れがあります。このときは、対物賠償保険や車両保険は適用されることが多いものの、それ以外の保険は適用対象外です。

自損事故の届出を警察に行っていなかったとき

事故の届出を警察に行わないと、自動車安全運転センターから「交通事故証明書」が発行されません。この書類は、自賠責保険か任意保険かを問わず、自動車保険の保険金請求時に必要な書類です。このため、事故の届出を行わないと保険金の請求ができません。なお、交通事故証明は自動車安全運転センターの窓口の他、郵便振替、インターネットで申請でき、物損事故では事故発生から3年が交付期限となります。

自損事故で自動車保険を使うときの注意点

自損事故で使える保険にはいくつか種類があるものの、そもそも物損は自動車保険に対物賠償保険などを付けておかなければ利用できません。また、自動車の故障の程度によっては等級を下げてまで保険金で支払うよりも、全額自己負担とした方が安く済むこともあります。

ここからは、自損事故で自動車保険を使うときの注意点を紹介します。

物損は自動車保険に所定の保険をかけていないと補償されない

人身傷害保険と自損傷害保険は、人の死傷に対する保険のため物損には使えません。もし、保険で物損まで補償したいなら、自動車保険に対物賠償保険や車両保険などを付けなくてはならず、車両保険に関しては自損事故に対応している保険かどうかの確認も必要です。いくつかの自動車保険に加入していても、補償の適用条件が異なるためよく確認しましょう。

使用により等級が下がる保険と下がらない保険がある

使える保険の中には、等級が下がるものと下がらないものがあります。分類すると以下のとおりです。

等級が下がる保険 等級が下がらない保険
  • ・車両保険
  • ・対人賠償保険
  • ・対物賠償保険
  • ・人身傷害保険
  • ・搭乗者傷害保険

等級は保険の使用により3等級または1等級下がり、どの程度下がるかは事故の種類によっても異なります。下がるものと下がらないものがあるため、内容を確認し使い分けることが大切です。

等級を下げるより修理費用を全額自己負担した方が安いこともある

物の故障の程度によっては、保険金を請求せず全額自己負担とした方が安く済むこともあります。保険金の受取を検討するときは、等級を落とすことで増額する翌年度以降の保険料額と、車両の修理にかかる費用を比べましょう。その上で、自己負担が少ない方を選ぶとよいでしょう。

自損事故でも使える保険はある!対応した商品を選んでおこう

自損事故とは、相手方がおらず運転者が単独で起こした事故です。自損事故であっても、警察に届け出た後「交通事故証明書」を入手すれば、適用する保険から補償を受けられます。自損事故では、同乗者の死傷だけでなく、物損事故につながることもあります。対応した保険に加入しておくと、いざというときも心強いでしょう。

JAL保険ナビでは18社・約40種類の豊富な保険商品から、自分に合った保険をお選びいただけます。「保険は条件が複雑で選ぶのが難しい」と感じる方には、専門家が無料の保険相談にも対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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